2011/03/20

福島原発の放射能に関する専門家の意見[4/30 更新, No.0.1, 7 追加]

備忘録

0 原子力安全委員会
 ■放射線防護の線量の基準の考え方 (Added: 11/04/19-06:28)
http://www.nsc.go.jp/info/20110411_2.pdf
 今後、この横軸に具体的な時間(年)が入って、それが基準になっていくのだろう。

0.1 ICRP勧告 [New on 4/30]
 ■Fukushima Nuclear Power Plant Accident (ICRP ref: 4847-5603-4313, 2011/03/21)
http://www.icrp.org/docs/Fukushima%20Nuclear%20Power%20Plant%20Accident.pdf
和訳 http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/rb-rri/ICRP.pdf
・緊急時の一般人の最も高い計画的残存線量の参照値:20-100 mSv  (*1)
・放射線源が制御下におかれた後の参照値:年間 1-20 mSv 内
・長期目標の参照値:年間 1 mSv
・救助隊員の参照値:500-1000 mSv (*1)

(*1) 年間ではない点に注意

6 土壌について 
■新潟大学農学部の野中昌法教授からのメッセージ (2011/04/01)
http://ankei.jp/yuji/?n=1349

7 日本放射線影響学会 [New on 4/30]
■福島原子力発電所の事故に伴う放射線の人体影響に関する質問と解説 (Q&A) (2011/03/18)
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/rb-rri/

1 SMC JAPAN
■放射線被ばくに関して:専門家コメント 2011年3月18日 Ver.2.0 (Updated: 110319-21:18)
by 近藤誠、李玲華
http://smc-japan.sakura.ne.jp/?p=1173
■放射線による内部被ばくについて 2011年3月21日Ver.1.0 (Updated: 110321-13:22)
by 岡山大・津田敏秀教授
http://smc-japan.sakura.ne.jp/?p=1310
■リスクコミュニケーションの前提議論
by 岡山大・津田敏秀教授
Ver.1.0 (110321-16:01 Updated 110321-16:54)
Ver.2.0 (110321-16:01 Updated 110401-18:25)
http://smc-japan.sakura.ne.jp/?p=1382
『リスクコミュニケーションの前提議論』(PDF, 127 KB) (4/1 20:45現在リンク切れです)
http://smc-japan.sakura.ne.jp/wordpress/wp-content/uploads/2011/03/110321-TTsuda-v01.pdf

2 失敗学会 
今、福島で何が起きている?何故起きたのか?これからどうなる? by 吉岡律夫
http://www.shippai.org/shippai/html/index.php?name=news573 (4月23日以降分)
http://www.shippai.org/shippai/html/index.php?name=news559 (3月14日~4月21日分)
最新版は↑
4月8日(14:30)第21報 新たな脅威<< ここをクリック
4月6日(21:00)第20報 崩壊熱計算式について<< ここをクリック
4月5日(9:30)第19報 原子炉圧力容器は健全であるか?<< ここをクリック
4月3日(16:30)第18報 2号機からの放射能<< ここをクリック
4月1日(21:00)第17報 海水への放射能流出<< ここをクリック
3月30日(20:00)第16報 真の勇者達<< ここをクリック
3月29日(14:20)第15報 圧力容器損傷、プルトニウム検出<< ここをクリック
3月26日(12:00)第14報 4号機燃料プールの水<< ここをクリック
3月25日(22:00)第13報 作業員、火傷<< ここをクリック
3月24日(21:00)第12報 1号機温度計は壊れていた<< ここをクリック
3月23日(21:00)第11報 もし臨界が起こったら<< ここをクリック
3月22日(21:00)第10報 3号機 MOX は大丈夫<< ここをクリック
3月21日(17:30)第9報 4号機の現状<< ここをクリック
3月20日第8報 水蒸気爆発は起こらない<< ここをクリック
3月19日第7報 臨界事故が起きない理由<< ここをクリック
3月19日第6報b 最後に勝つ<< ここをクリック
3月19日第6報a 4号機燃料プール水位<< ここをクリック
3月18日第5報 頭の中が真っ白に<< ここをクリック
3月17日第4報 何が起きる?<< ここをクリック
3月16日第3報 審判の日?<< ここをクリック
3月15日第2報 TMIよりひどいのか?<< ここをクリック
3月14日第1報 国内初「炉心溶融」か セシウムを検出 福島第一原発<< クリック

3 福島原発の放射能を理解する 2011年3月18日:バージョン1
by Ben Monreal 翻訳 by 野尻美保子
http://ribf.riken.jp/~koji/jishin/zhen_zai.html
http://ribf.riken.jp/~koji/monreal.pdf

4 東大原子核物理 早野教授
・ツイッターで関連情報を公開、解説されています。
http://twitter.com/hayano
・早野龍五ホーム
http://nucl.phys.s.u-tokyo.ac.jp/hayano/jp/index.html
・全国の放射線量グラフ他
http://plixi.com/4775212

5 東大病院放射線治療チーム
・ツイッターで関連情報を公開、解説されています。
http://twitter.com/team_nakagawa
・ツイッターの内容がブログでも公開されています。
http://tnakagawa.exblog.jp/
・東大病院放射線治療チームホーム
http://www.u-tokyo-rad.jp/

以下はツイッターでの @team_nakagawaの一連の発言を見やすいようにまとめたものです。
ブログにツイート内容が掲載されているので、今後は、そちらをご覧下さい)
3月15日~17日のコメントのまとめ
http://www.u-tokyo-rad.jp/data/twittertoudai2.pdf

内部被ばくの影響について
@team_nakagawa による解説 (2011/03/18 19:59 ~2011/3/19 17:13:40、twitterにて)

内部被ばくが実際にどの程度の影響があるのか、という質問が多いので、それについてご説明します。

私たちは、大気、大地、宇宙、食料等からも日常的に放射線を浴びてい ます。これを「自然被ばく」といいます。放射性物質を含む水や食物を体内に取り込むと、体内の放射性物質が、体内から、放射線を発します。この日常的な水 や食物からの内部被ばくは、主にカリウムによるものです。

カリウムは、水や食物などを通して、私たちの体の中に取り込まれ、常に約200g存在します。 その内の0.012%が放射能を持っています。すなわち日常的に360,000,000,000,000,000,000個の ”放射性”カリウムが、体内に存在しています。

”放射性”カリウムは、体内で1秒間当たり6,000個だけ、 別の物質(カルシウムまたはアルゴン)に変わります。 これを「崩壊」と呼んでいます。

そして、崩壊と同時にそれぞれの”放射性”カリウムが放射線を放出します。これが内部被ばくの正体です。 1秒間あたり6,000個の崩壊が起こることを、6,000Bq(ベクレル)と言います。

例えば今、”放射性”ヨウ素が、観測によって各地で検出されています。その”放射性”ヨウ素が含まれた水を飲むと、内部被ばくが起こります。この影響はいったいどれくらいでしょうか?

福島原発から約60km離れた福島市の18日の飲料水に含まれていたヨウ素の崩壊量は、最大で1kgあたり180Bq(ベクレル)でした。1秒間に180個の崩壊が起こっているということです。

ヨウ素が甲状腺に取り込まれる割合を20%とし、その放射能が半分になる日数を6日と仮定できます。 現在の福島市の水を毎日2リットル飲み続けると、720Bq(ベクレル)の内部被ばくを受けることになります。

現在の福島市の水を毎日2リットル飲み続けると、720Bq(ベクレル)の内部被ばくを受けることになります。これは、先ほどのカリウムによる日常的な内部被ばく(6,000Bq [ベクレル])の8分の1以下です。

もちろん、取り込まれ方や崩壊の仕方はカリウムとヨウ素で異なるので、正確な比較ではありませんが、今観測されている放射性物質の影響をこのように見積もることができます。

食品についての放射能の測定が始まっており、牛乳などから、わずかな放射能が検出されたと報じられています。しかし、「牛乳問題」は“期間限定”です。そもそも、なぜ、牛乳が問題になるか、順に解説していきます。

史上最大の放射事故であるチェルノブイの原発事故では、白血病など、多くのがんが増えるのではないかと危惧されましたが、実際に増加が報告されたのは、小児の甲状腺がんだけでした。なお、米国のスリーマイル島の事故では、がんの増加は報告されていません。

放射性ヨウ素は、甲状腺に取り込まれます。これは、甲状腺が、甲状腺ホルモンを作るための材料がヨウ素だからです。なお、普通のヨウ素も放射性ヨウ素も、人体にとっては全く区別はつきません。物質の性質は、放射線性であろうとなかろうと同じだからです。

ヨウ素は、人体には必要な元素ですが、日本人には欠乏はまず見られません。海藻にたっぷり含まれているからです。逆に、大陸の中央部に住む人では、ヨウ素が足りたいため、「甲状腺機能低下症」など、ヨウ素欠乏症が少なくありません。

チェルノブイリ周囲も、食べ物にヨウ素が少ない土地柄です。こうした環境で、突然、原発事故によって、ヨウ素(ただし、放射性ヨウ素)が出現したので、放射性ヨウ素が、住民の甲状腺に取り込まれることになりました。

ヨウ素(I2)は水に溶けやすい分子です。原発事故で大気中に散布されたヨウ素は、雨に溶けて地中にしみ込みます。これを牧草地の草が吸い取り、牛がそれを食べるという食物連鎖で、放射性ヨウ素が濃縮されていったのです。野菜より牛乳が問題なのです。

結果的に、牛乳を飲んだ住民の甲状腺に放射性ヨウ素が集まりました。放射性ヨウ素が出す“ベータ線”は、高速の電子で、X線やガンマ線とちがって、質量があるため、物とぶつかるとすぐ止まってしまいます。

子供たちは、大人よりミルクを飲みますし、放射線による発がんが起こりやすい傾向があるため、小児の甲状腺がんがチェルノブイリで増えたのでしょう。ただし、I-131の半減期は約8日です。長期間、放射性ヨウ素を含む牛乳のことを心配する必要はありません。

放射性ヨウ素(I-131)の場合、放射されるベータ線は、2ミリくらいで止まってしまいますから、甲状腺が“選択的”に照射されるわけです。放射性ヨウ素(I-131)を飲む「放射性ヨウ素内用療法」は、結果的には“ピンポイント照射”の一種だと言えます。

I-131は、ベータ線を出しながら、“キセノン”に変わっていきます。(ベータ崩壊)8日が半減期ですから、I-131の量は8日で半分、1ヶ月で1/16と減っていきます。3ヶ月もすると、ほぼゼロになってしまいますから、「牛乳問題」も“期間限定”です。

内部被ばくによる健康被害(続き)
@team_nakagawa による解説 (2011/03/21 12時頃、twitterにて)

では、昨日の続きです。放射性ヨウ素(I)やセシウム(Cs)による内部被ばくによって、具体的にどの程度の健康被害が起きるのでしょうか。内部被ばくについて考える前に、「放射能(Bq:ベクレル)」と「被ばく量(Sv:シーベルト)」の違いについて見てみましょう。
Bq(ベクレル)というのは、一秒間あたりの放射性物質の崩壊数を表します。いわば「放射能」のことです。「崩壊」を理解するには、Cs-137を例に早野先生が作成くださった図を参照ください:@hayano http://bit.ly/gYdQ8s

例えば、放射線物質であるCs-137(セシウム137)は、安定なCs-133に比べて中性子の数が多過ぎ、一個の中性子が陽子に変わります。これをベータ崩壊と言います。 @hayano http://bit.ly/gYdQ8s参照。 Cs-134(セシウム134)も同様です。

崩壊した時に出てくるベータ線やガンマ線(放射線)が、人体にダメー ジを与えます。そのダメージを「被ばく量(Sv:シーベルト)」で表しています。「放射能(Bq:ベクレル)」と「被ばく量(Sv:シーベルト)」は密接 な関係にあります。放射能が増えると被ばく量も当然増えます。

食物に含まれる「放射能(Bq:ベクレル)」が、それを摂取する私た ちにどれだけ「被ばく量(Sv:シーベルト)」を与えるかは、放射性物質の種類、取り込み方(吸引か経口か)、私たちの年齢などによって変わります。これ らを考慮すれば「放射能(Bq)」から「被ばく量(Sv)」に変換できます。

では、まずCs(セシウム)を見てみましょう。Cs-134(セシウム134)は、3月16日8時に福島市で水道水中に1kgあたり25Bq(ベクレル)観測されました。それ以降は観測されていません。

被ばく量に変換するためのCs-134(セシウム134)の「変換係 数」は、大人で0.019μSv/Bqです。つまり、1Bq(ベクレル)で、0.019μSv(マイクロシーベルト)の被ばく量であると計算できます。こ の「変換係数」は、私たちの年齢などによって変わります。

では、3月16日8時に福島市での水道水を2リットル飲んだとしま しょう。体内には50BqのCs-134が取り込まれます。「変換係数」を使うと0.95μSv(マイクロシーベルト)の被ばくです。同様にCs-137では、0.86μSvの被ばくです。両方足し合わせると、1.81μSvです。

3月19日、ホウレンソウに1kgあたり524Bq(ベクレル)の Cs(セシウム)が観測されました。Cs-134かCs-137か内訳はわかっていませんので半分ずつだと仮定します。このホウレンソウを100g食べた とすると、トータルで0.84μSv(マイクロシーベルト)の被ばくとなります

ちなみに私たちは日頃から食物に含まれる放射性K(カリウム)による被ばくを受けています。それは1年で100〜200μSv(マイクロシーベルト)と推定されています。

今推定したCs(セシウム)の被ばく量は、放射性物質を一度摂取したことによって70歳になるまでに蓄積されるであろう被ばく量を表します。もちろん年齢による代謝や食生活の違いによって個人差も生じると考えられます。

ここで推定されたCs(セシウム)の被ばく量は少ないように見えますが、食品衛生法上の暫定(ざんてい)規制値を越えているのも事実です。規制値を越えた食物の流通を管理することで、国民の安全が確保されると考えています。

放射性物質であるヨウ素I-131は各自で見積もりをされてみてください(追って回答を示します) #nakagawaquiz。

放射性物質であるヨウ素I-131の「変換係数(μSv/Bq)」は、0歳で0.140、1〜6歳で0.075、7〜14歳で0.038、15〜19歳で0.025、大人で0.016です。ホウレンソウ中に観測された量は、最大1kgあたり15,020Bqでした。 #nakagawaquiz

ホウレンソウで観測された放射性物質の量は、ホウレンソウが洗われて いない状態で測定されているようです。したがって今皆さんが見積もった被ばくは過大評価されているかもしれないと意識しておいてください。また、乳児はお 母さんの母乳から摂取するとします。乳児は、ホウレンソウは食べられません!

注意:誤り訂正;
マニュアルでは「水洗いせず」との記載がありますが、厚労省から別の通達で水洗いしてから測定するように各自治体や測定機関に連絡があったようです
したがって、以前、放射性物質を含むホウレンソウを摂取したときの被ばく線量を計算していただいたときに、「水洗いしていなければ、過大評価している」と書きましたが、実際に水洗いされているので、過大評価せずに計算されていると考えてよいと思います。
Wed Mar 23 2011 11:13

再度、3月21日のツイート(http://bit.ly/hNHCXl)で、「「緊急時(中略)マニュアル」によると、食物の放射能測定前に水洗は行なっていないようです」と申し上げたのですが、別途通達があり、「水洗いして測定した」ということがわかりました。お詫びして訂正します。
Wed Mar 23 2011 11:30


内部被ばくによる健康被害(続きの続き)
@team_nakagawa による解説 (2011/03/21 19時頃、twitterにて)

#nakagawaquiz 解答です。ホウレンソウ中に観測されたヨウ素-131の最大値として、1kgあたり15,020Bq(ベクレル)を用います(ベクレルに関しては3月19日のツイートを参照 http://bit.ly/eHcLCP )。そのうち100gを摂取したとします。

1~6歳:15,020×0.1×0.075 = 112.65, 7~14歳:15,020×0.1×0.038 = 57.08, 15~19歳:15,020×0.1×0.025 = 37.55, 大人:15,020×0.1×0.016 = 24.03単位は(マイクロシーベルト)です

お母さんがホウレンソウを100g摂取し、ヨウ素の1/4が母乳へ移るとして(http://j.mp/gVh9nC 原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について)、15,020×0.1×0.25×0.140 = 52.57μSv(マイクロシーベルト)が被ばく量となります。

乳児の方がお母さんよりも被ばくが多くなります。ヨウ素が母乳で濃縮されることが理由ではありません。乳児に影響を与えるのは、摂取した母乳中のヨウ素の濃さではなく蓄積量ですから、ヨウ素をお母さん以上に摂取することはあり得ません。乳児は大人よりも放射線に対して敏感なことが理由です。

他の食物や自然界からの放射線をすべて考慮して、被ばく量を考慮すべきというご指摘をいただいていますが、その点はまったくその通りです。

なお「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」(厚労省)によると、食物の放射能測定前に水洗は行なっていないようです。数値データに関しては国際放射線防護委員会レポートを参照ください。

原子力安全・保安院の文書に、福島第一原発敷地内で観測された核種(放射性物質の種類)の分析結果が出ています。http://bit.ly/dEubzR(PDF文書)。

放射性物質の放射能に警戒するには、その〈量=測定値〉と〈時間=半減期〉の関係を正しく理解することが重要です。

現在の福島第一原発敷地内での放射能は、I-131(ヨウ素131)で1リットルあたり5.94(Bq:ベクレル)となっており、Cs-137(セシウム137)1リットルあたり0.022Bqよりも大きいですね。現時点ではI-131のほうが「放射能」は強い、と言えます。

この値から、I-131(ヨウ素131)とCs-137(セシウム137)それぞれ1リットルあたりの個数を出してみましょう。答えはI-131が69個"600万個"、Cs-137が380個"3300万個"となります。なんと、Cs-137のほうが多いのです。

I-131(ヨウ素131)は8日で半分になります。現時点での放射能は大きいけれど、3ヶ月もあればなくなります。

一方、Cs-137(セシウム137)が半分になるには30年必要です。その数もI-131(ヨウ素131)に比べて初めから5倍以上多いのです。長期的に見れば放射能もCsのほうが多くなります。Cs-137が拡散すれば持続的な被ばくにつながることが理解できると思います。

もちろん、これはあくまで原発事故が収束することを念頭に置いてのお話です。それを前提にすればヨウ素131の影響は「期間限定」。「今」を注意することで被害を最小限にできます。問題はセシウム137です。土壌汚染や食物などによる内部被ばくをずっと意識しなければなりません。

子供や乳児についてのご質問が多数あります。その他のご質問もいくつか頂いております。明日以降、過去の教訓を下に予測し得る範囲で出来る限りお答えしていきたいと思います。

[誤記訂正]
@team_nakagawa こちらに誤りがございました。ヨウ素131が”69個"ではなく"600万個”、セシウム137が”380個”ではなく”3300万個”です。ご指摘くださった方、大変有難うございました。m(_ _)m 3/22 0時頃 ⇒訂正済

放射線の「妊婦・胎児への影響」
@team_nakagawa による解説 (2011/03/23 11時頃、twitterにて)


多くのご質問をいただいている、放射線の「妊婦・胎児への影響」について、お話しします。

妊娠中、「器官形成期」と呼ばれる妊娠初期の2か月間がとくに放射線の影響を受けやすいのです。また、妊娠2か月以降の「胎児期初期」も比較的影響を受けやすいとされています。放射線が胎児に及ぼす影響には、奇形、胎児の致死、成長の遅延などがあります。

ただし、少なくとも10~20万マイクロシーベルト(累積)以上の放射線被ばくがないと、これらの影響は生じないことが知られています。また、受胎(妊娠)前に被ばくしても、それが原因となって、胎児・子供に影響が出た、ということは報告されていません。

 このことは、国際放射線防護委員会の勧告「妊娠と医療放射線」に示されています。http://bit.ly/hC5pC6 要旨には「胎児が浴びた放射線の総量が100ミリグレイ(=10万マイクロシーベルト)以下では、放射線リスクから判断して妊娠中絶は正当化されない」と書かれています。

国際放射線防護委員会の勧告は、CTなど医療で使用する放射線による、短時間での被ばくを想定したものものです。原発から放出される放射線のように、長時間かけてゆっくり被ばくした場合には、被ばく中にDNAの回復が起きるため、短時間での被ばくよりもはるかに影響が出にくいことも知られています

したがって、現状では、少なくとも避難地域や屋内退避地域以外であれば、胎児への影響はまず心配しなくてよいでしょう。ただし、みなさんご存知のように、自然被ばく(原発事故がなくても、私たちが宇宙や大地や食料から受けている放射線)のレベルでも、奇形や小児発がんは、皆無ではありません。

ヨウ素131の放射能は8日で半分、16日で4分の1になります。日持ちが良いもの、流通や加工で食卓に届くまで時間を要するものに関しては、健康面に害を与えません。ただし、寿命の長い放射性セシウムは残っています。放射性セシウムの含有量が発表され、それが規制値以下であることが大事です。


水道水の放射線能
@team_nakagawa による解説 (2011/03/24 10時前頃、twitterにて)


放射線性ヨウ素の半減を待つ(I-131の半減期=8日)くらいしか、手はないと思いますが、そもそも、水道水についても心配はありません。昨日来、報道されている「水道水の放射線能」問題を、このあと考えてみます。

ある方にお願いして、煮沸によるヨウ素の濃度変化を検証する実験を、水道水中に含まれるI-131を対象に行いました。その結果、水道水を煮沸すればするほど水蒸気だけが飛んで、I-131が濃縮されました。もし、煮沸しようとされている方がいれば、直ちにやめるようお伝え願います。

 昨日、東京都葛飾区金町にある都の浄水場の水から210Bq/L(1リットルあたり210ベクレル)の放射性ヨウ素131が検出されました。水道水中の放射性ヨウ素濃度の上昇は、空気中のヨウ素が昨日の雨と共に江戸川などの河川に流れ込んだことによると考えられます。

原子力安全委員会が定めた飲食物摂取制限に関する指標値は、300Bq/Lとなっており、210Bq/Lは基準内です。ただし、食品衛生法に基づく乳児の飲用に関する暫定的な指標値の100Bq/Lを超えてしまっています。

このため、東京都は、23区と武蔵野市、町田市、多摩市、稲城市、三鷹市の都民に対して、乳児に限って水道水の摂取を控えるよう呼びかけています。ただし、乳幼児以外は、他に水が確保できなければ、飲んでも差し支えないとしています。これを検証します。

もし210Bq/Lが長期間続くと仮定し、成人でがこの水を毎日1リットル飲むとすると、約1年間飲み続けた場合に1ミリシーベルトに達します。本来は、ヨウ素は「崩壊」によってどんどん減っていくので、実際はもっと少ない被ばく量になります。

「公衆被ばく」の限度が100ミリシーベルト(累積)です。つまり、210Bq/L(1リットルあたり210ベクレル)のヨウ素が含まれる水道水は、「公衆被ばく」限度の1/100程度ですから、問題のないレベルであることが分かると思います。 胎児と乳児でも、少なくとも10ミリシーベルト(累積)以上の被ばくがないと、身体的な影響が生じないことが知られています。

乳児の場合、粉ミルクなどで、一日1ℓ飲むとすると、約1年で、やっと10ミリシーベルトに達する計算になります。

昨日水道水を飲んでしまったと心配される方がおられるかもしれませんが、数回程度では、乳幼児、成人ともに、全く問題のないレベルです。

また、この程度なら水道水を煮沸してもしなくても、全く健康に害はありません。 煮沸による水道水のヨウ素の濃度変化を検証する”実験”は、放射線医学総合研究所の環境放射線能の某専門家にお願いしました。

どんな風に測定して頂いたかをお知らせします。

今朝、自宅で、5分程、水道水を流してからペットボトルに採水。さらに鍋に水道水を入れて、1分、5分と煮沸。自然にさまして、それぞれ、別のペットボトルに封入。これを研究所に持って行き、Ge半導体検出装置で測定。 その結果、間違いなくI-131が検出されました。

ちなみに、I-132は検出されませんでした。蒸発量に依存しますが、煮沸で I-131は濃縮される結果となりました。

水道水の煮沸はやめて頂きたいと思います。


放射線被ばくで、私たちの身体にどんな影響が出るのでしょうか
@team_nakagawa による解説 (2011/03/26 6時頃、twitterにて)

そもそも、放射線被ばくで、私たちの身体にどんな影響が出るのでしょうか。そのメカニズムはいったい何なのでしょうか? このあたりを整理したいと思います。

 極端なケースですが、全身に4シーベルト(4000ミリ、400万マイクロ)の被ばくが起こると、2ヶ月後に半分の確率で人間は死亡します。(無治療の場合)

もちろん、このような“超大線量”の被ばくは例外中の例外ですが、日本でも、12年前に起こっています。

19891999年、茨城県の東海村で「臨界事故」が起こりました。「臨界」とは、核分裂反応が連鎖的に起こるもので、ずさんな作業によって、工場の一角に突然、“裸の原子炉”が出現することになったのです。

被ばくした作業員2名は東大病院で死亡し、私もその治療に当たりました。

2人の被ばく量は、およそ1万8000ミリと8000ミリと推定されています。(正確な数字はだれにも分かりません)

作業員には、白血球のゼロレベルまでの低下や激しい血便、皮膚障害などが起こりました。大量の放射線によって、骨髄、腸管、皮膚など「再生系組織」の「幹細胞」および関連細胞がダメージを受けたからで、抗がん剤や放射線治療の副作用が起こるメカニズムとおよそ同じです。

実際には、全身の被ばくでも、1シーベルト以下の線量では、ほとんど症状は現れません。

それでも0.25シーベルト(250ミリ=25万マイクロ)を超えると、検査での数値に白血球の減少が出てきます。

 臨界被ばく事故の発生は、1999年9月30日でした。ごめんなさい。⇒訂正済

原発事故現場で作業している人たちの被ばくの限度が、100ミリから250ミリに引き上げられましたが、検査でも異常(白血球減少)が出ないぎりぎりの線量に設定されたことになります。

訂正+削除:100ミリシーベルト(=10万マイクロシーベルト以下)の被ばくになると、症状もなければ、検査でも異常値は見られません。いわゆる「ただちに健康に影響のあるレベルではない」被ばくとなります。

東海村の臨界事故では2人の作業者が死亡されましたが、今回の福島第一原発の事故とはちがいますので、誤解なきようお願いします。

24日、福島第一原発の作業者3人が、足に大量の放射線を浴びたと報じられています。足の皮膚が受けた被ばく量は、2~6シーベルトとのこと。現場の管理体制が問題です。 足の被ばくが数シーベルトであっても、上半身につけた放射線量計では、200ミリシーベルト以下であり、血液検査では異常が出ないと思います。足の皮膚の被ばくも3シーベルト以下であれば、症状も出ないでしょう。

「急性放射線障害」には「しきい値」があるからです。

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